不動産売却時に発生する仲介手数料とは?金額の目安と値下げ交渉のコツ
不動産売却を行う際に支払う仲介手数料は、不動産会社が売却活動を行い、売主と買主の間で売買契約を成立させるための成功報酬です。上限が設定されており、値下げ交渉ができる場合もありますがリスクもあります。
仲介手数料の金額は物件の価格に応じて段階的に計算されます。多くの場合、手数料は売却価格の3%前後となりますが、交渉次第では値下げが可能です。ただし、値下げに伴いサービスの質が低下するリスクもあるため、交渉時には注意が必要となります。
目次
不動産売却で支払う仲介手数料とは
不動産売却を行う際には、不動産会社に対して「仲介手数料」を支払う必要があります。
仲介手数料は、不動産会社が売却活動を行い、売主と買主の間で売買契約を成立させるために尽力したことへの報酬です。こちらでは具体的な支払いのタイミングや、仲介手数料がかからないケースについて紹介します。
◇不動産会社の成功報酬
不動産売却時に支払う「仲介手数料」は、不動産会社が買主を見つけ、売買契約が成立した際に支払われる成功報酬です。一般的には、売買契約が締結したときに仲介手数料の半分を支払い、物件の引き渡し時に残りの半分を支払います。この2回払いの方式は、売主にとって資金準備がしやすく、不動産業界でも一般的です。
また、物件の引き渡しが完了してから全額を支払うよう、不動産会社に交渉することも可能です。
◇仲介で売却する際に発生する
不動産を売却する方法には、「仲介」と「買取」の2つがありますが、仲介手数料が発生するのは「仲介」で売却する場合です。
仲介とは、不動産会社が売主と買主の間に立ち、売却活動を行ってくれる方法です。
売主が直接不動産会社に売却する「買取」では、不動産会社が自社で物件を買い取るため、仲介手数料はかかりません。
買取は手続きが迅速で、売却を急ぐ場合や、契約不適合責任を回避したい場合に向いていますが、売却価格が市場価格よりも低くなることが一般的です。そのため、高値での売却を希望する場合には、仲介を選択するケースが多いです。
◇買い手が見つからなければ支払う必要がない
仲介手数料は「成功報酬」であるため、売買契約が成立しない限り、支払いの義務はありません。これは、売主にとって大きな安心材料です。もし不動産会社に売却活動を依頼しても、買い手が見つからずに契約が成立しなかった場合、仲介手数料は一切かかりません。
また、売却契約後に、やむを得ない事情で売却を中止した場合でも、契約内容次第では手数料が発生しないことがあります。例えば、「住宅ローン特約」や「買い換え特約」など、特定の条件が満たされなかった場合の契約解除では、仲介手数料が発生しないことが一般的です。
このように、支払い義務が生じるタイミングを理解しておくと、安心して売却活動に臨むことができます。
仲介手数料の計算方法
画像出典:フォトAC
仲介手数料は、不動産会社に支払う成功報酬の一部であり、その金額は法律で定められた上限があります。不動産売却を検討する上で、この手数料の仕組みを正しく理解しておくことは重要です。
◇仲介手数料には法律で定められた上限がある
不動産売却における仲介手数料には、宅地建物取引業法に基づいた上限が設定されており、不動産会社が売却時に請求できる手数料の金額を制限しています。200万円以下の部分は5%、200万円を超えて400万円以下の部分は4%、そして400万円を超える部分には3%が上限です。
この上限はあくまで最大限の金額を示すものであり、実際の手数料は不動産会社と売主の合意によって決定されます。多くの場合、不動産会社は上限額に基づいて請求を行いますが、上限を超えた手数料の請求は法律違反です。このため、売主としては手数料の上限について理解し、適切な費用を支払うことが求められます。
仲介手数料の上限規定は、売主が不動産会社との取引において過剰な手数料を請求されないようにするための保護措置です。この上限に基づき、売主は不動産会社と事前に手数料についての取り決めを行うことで、予期せぬ高額な支払いを避けることができます。
出典元:国土交通省
◇仲介手数料の計算方法
仲介手数料の計算方法は、物件の売却価格をもとに段階的に計算されます。
たとえば、物件価格が3,000万円の場合、仲介手数料の上限は次のように求められます。まず、200万円以下の部分に対しては200万円×5%で10万円が上限です。次に、200万円を超えて400万円以下の部分には、200万円×4%で8万円が適用されます。
最後に、400万円を超える部分については、2,600万円×3%で78万円が計算されます。これらを合計すると、仲介手数料の上限額は96万円(税別)です。このように、売却価格を区分ごとに計算し、合計することで手数料の上限が決まる仕組みとなっています。
より簡単に計算したい場合には、速算式を利用することもできます。速算式では、400万円を超える物件に対しては「売却価格×3%+6万円」という簡便な式で仲介手数料を算出できます。
これらの指揮で導き出した値に消費税を加算した金額が、実際に支払う仲介手数料となります。不動産売却を考える際には、この計算方法を理解しておくことで、より安心して取引を進めることができるでしょう。
仲介手数料を安くすると優先順位が下がる可能性も
不動産売却時に仲介手数料をできるだけ抑えたいと考える方も多いでしょう。しかし、手数料を値引きすると、その分のリスクも存在します。
◇囲い込みをされるリスクが高まる
仲介手数料を値引きした場合、不動産会社が囲い込みを行うリスクが高まる可能性があります。囲い込みとは、不動産会社が物件情報を他の不動産会社に共有せず、自社で売主と買主をまとめようとする行為です。
この場合、物件を市場に十分に広められず、買い手の選択肢が狭まるため、結果的に売却価格が下がる恐れがあります。特に、手数料を減額した場合は、不動産会社が収益を確保しようとする意図から、囲い込みを行いやすくなることがあるのです。売却スピードや価格に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
◇他の名目で請求される
仲介手数料の値引きを交渉すると、不動産会社が他の名目で追加費用を請求するケースもあります。たとえば、「特別な広告費用」や「出張費」など、本来は仲介業務に含まれるべき項目を別料金として請求される場合があるのです。
こうした追加費用は、仲介手数料の減額分を埋め合わせるために設定されることが多く、結果的にトータルで支払う金額が大きくなる可能性があります。
手数料を安くすることにばかり注力せず、契約内容をしっかり確認し、追加費用の発生有無についても事前に確認することが大切です。
◇対応が悪くなる可能性がある
仲介手数料の値引きにより、不動産会社の対応が悪くなることも考えられます。手数料が低く設定されていると、不動産会社にとってその取引の優先度が下がり、他の高収益な案件を優先する場合があるのです。その結果、売却活動が消極的になったり、対応のスピードが遅れたりするリスクが生じます。
また、物件の魅力を十分に伝える広告活動や内見対応など、売却に必要なサポートの質が低下することも考えられるでしょう
仲介手数料の値下げ交渉を成功させるコツ
不動産売却において、仲介手数料の値引き交渉は費用を抑えるための有効な手段ですが、成功させるにはいくつかのコツがあります。ここでは、専属専任・専任媒介契約を条件にした交渉や、地元の不動産会社を選ぶ理由、他社の査定報告書を活用する方法を紹介します。
◇専属専任・専任媒介契約を条件に交渉する
仲介手数料を値引きしてもらうための方法として、専属専任または専任媒介契約を結ぶことが挙げられます。専属専任媒介契約や専任媒介契約を選ぶと、依頼した不動産会社が売却活動を独占的に行うことになるため、不動産会社は手数料の収益が確実になるのです。これにより、売却に積極的になるだけでなく、手数料の値引き交渉にも応じやすくなります。
また、専属専任媒介契約では、個人での買主探しも制限されるため、不動産会社のサポートを全面的に受けられる利点もあります。
手数料の交渉をする場合は、契約形態をうまく活用しましょう。
◇地元の不動産会社に仲介を依頼する
仲介手数料の値引きを交渉する際には、地元の中小不動産会社を選ぶことも有効です。
中小の不動産会社は、大手に比べて地元の顧客を大切にし、競争の激しい市場で顧客を獲得するために柔軟な対応をしてくれる場合も少なくありません。大手では一律の手数料が設定されている場合が多いのに対し、中小の不動産会社では手数料の減額やサービスの追加など、個別の対応をしてもらえる可能性が高まります。
さらに、地元密着型の不動産会社は地域の物件情報に詳しく、売却活動も迅速に行うことが期待できるため、値引き交渉に応じてくれると同時に、売却のスムーズさも保つことが可能です。
◇他社の査定報告書を提示する
他社の査定報告書を利用することも、仲介手数料の値引き交渉には有効な手段といえます。
複数の不動産会社から査定を受け、その報告書を交渉の材料として提示することで、よりよい条件を引き出すことが可能です。たとえば、他の会社の査定額が高ければ、その報告書を提示することで、不動産会社が条件を見直してくれることがあります。
また、他社が提示する手数料の安さを比較材料として使うことで、交渉相手に「このままでは他社に依頼する」というプレッシャーを与えられるでしょう。
この方法を使うと、仲介手数料の値引きや、より高い査定額での売却を実現できる可能性が高まります。
不動産を売却する際に支払う仲介手数料は、不動産会社が売主と買主の間で売買契約を成立させるために行う仲介業務への成功報酬です。一般的には売買契約の成立時に半額、物件引渡し時に残りの半額を支払う2回払いの方法が採用されています。
また、売却方法によって手数料がかからないケースもあり、例えば不動産会社が自社で物件を買い取る「買取」では手数料が発生しません。仲介手数料の上限は法律で定められており、物件価格に応じて段階的に計算されます。
例えば、3,000万円の物件であれば、200万円までの部分に5%、200万円超から400万円以下の部分に4%、400万円超の部分には3%が適用され、その合計に消費税を加算した金額が実際に支払う仲介手数料となります。
手数料の値引き交渉も可能ですが、減額に伴い対応が悪くなったり、物件の売却優先度が下がったりするリスクがあるため、慎重な検討が必要です。